その、あまりにも痩せた体が可哀そうで、思わずごはんをあげたけど、お腹いっぱい食べたらすぐにどっか行っちゃった。
でもやっぱりそれから毎日ごはんを食べに来て、威嚇しながらもお腹いっぱい食べてたね。
そのうち、あんなに痩せてた体もだんだんふっくらしてきて、お腹いっぱいになってもどこにも行かなくなったチビ助。
ずっと居候だと思ってたけど、本当はもう家族だったんだよね。
すっかり居ついてからは、甘えん坊だったチビ助。
夜、寝る時も俺のすぐそばに陣取るから、キャロちゃんの居場所がなくなっちゃって、キャロちゃん部屋の片隅に寝てたね。
歩いてても、足を踏み出す前へ前へとまとわりつくから何度踏んづけたことか。それでも懲りなかったおバカなチビ助。
キャロちゃん用のベッド代わりの籠も、チビ助には小さすぎるのに無理やり入って、半分はみ出してるのには笑っちゃった。
本当に楽しい子だったね!
でも、
「オス猫はいずれいなくなる」って・・・
いままで飼ってたオス猫はみんないなくなっちゃったから、
チビ助もいずれいなくなることは覚悟してたよ。
だから・・・
黙っていなくなってくれればよかったのに・・・
チビ助が住みついてはや半年、
オス猫たちが家に帰らなくなる発情期を迎え、
やっぱりチビ助も、帰ってくるのはご飯を食べる時だけ。
4月が過ぎた頃には4〜5日に一度くらいしか帰ってこなくなった。
そして、今度は2週間たっても帰ってこない・・・
「やっぱり…」
ほとんどあきらめてたその時、
「にゃ〜」
「チビ助!?帰ってきたの!?」
去年のあの時と同じように、ガリガリに痩せたチビ助がそこにいる。
「ほらチビ助、ご飯食べな!」
帰ってきたのが嬉しくてすぐにご飯をあげた。
「もう帰ってこない…」
そう思っていたチビ助が帰ってきたのが本当に嬉しかった。
その時は・・・
ただ、あまり食欲がなさそうなのが少し気になる…
帰ってきたチビ助は、どこに行くでもなく、部屋の中で寝ている。
翌日、寝る場所がソファーからクローゼットに変わっていた。
「なんか元気ないなぁ…」
よく見ると顎のあたりが少し腫れている。
傷跡があったので、その部分が化膿しているようだったが、よくあることなのであまり気にもしなかった。
「早く元気になるんだよ!」
その時はすぐに元気になると信じていた。
そして、その翌日。
この日がチビ助の最後の日になるとは夢にも思っていなかった・・・
朝、いつものようにチビ助はクローゼットで寝ている。
「ゆっくり休むんだよ!」
そう言って仕事に出かけた。
夕方、仕事が終わり、家に帰るとチビ助がクローゼットから出てきてお迎えてしてくれた。
「ほら、ご飯食べな!」
早速ご飯をあげたが、少し匂いを嗅いだだけで食べない。
どうやら水も飲んでないようだった。
今にして思えば、この時病院に連れていけば良かったのかも・・・
結局またクローゼットに入っていき、チビ助は横になっていた。
よく考えてみれば、この時少し呼吸が苦しそうだったような気がする。
そして、その時は突然やって来た・・・
夜になり、そろそろ8時になろうとしたその時、
「にゃぁぁぁあ〜!!」
いきなり叫ぶような声でチビ助が鳴き始めた。
「チビ助!!」
慌てて駆け寄ってみると、ものすごい苦しんでる。
病院に連れていこうとしても、時間が時間なだけにいつもの病院はもう終わってる。
「チビ助、ちょっと待って!」
慌ててこの時間でもやっている病院を調べようとしたとき、フラフラしながらクローゼットからチビ助が出てきた。
「にゃぁおぅ…」
まるで呼びかけるようにチビ助が鳴く。
「チビ助、ちょっと待って!」
その声をききながらか、チビ助は背後で横になった。
そして・・・
そのまま呼吸する声も聞こえなくなった。
「チビ助!?…」
「チビ助!…」
抱き上げたチビ助はまだ暖かかった・・・
そして、
まだ生きてるように柔らかかった・・・
「ごめんなぁ…ごめんなぁ…」
もうそれしか口から出なかった・・・
その晩、いつものベッドにチビ助を寝かせてあげた。
チビ助の寝顔はとても安らかだった。
そして、枕元にチビ助のベッドを置き、その晩は一緒に寝た。
次の日の朝、家の庭先にチビ助を埋葬してあげた。
埋葬するときに見たチビ助は、まるでまだ眠っているようだった。
冷たくなっているのが不思議な感じだった。
よく考えるとチビ助は不思議な子だったね!
「猫は死期が近づくと姿を消す」って言うじゃん。
なんで帰ってきちゃったの?
帰ってこなければこんなに悲しくならずに済んだのに・・・
でもね・・・
本当は、帰ってきてくれて嬉しかったよ!
最後まで甘えん坊だったチビ助。
だから俺の背中を最後の場所に選んでくれたんだね。
だけど、少しだけ急ぎすぎたかな?
お腹すいたらまたいつでも帰っておいで!
じゃあまたね!
「バイバイ、チビ助」
先日、6月6日の夜8時頃、去年の夏から居候していたチビ助が虹の向こうに旅立っていきました。
あまりに突然の出来事に頭が真っ白になってしまい、しばらくの間まともに仕事も手につかない状態になっていました。
あれから約一ヶ月・・・
悲しみはまだ完全に癒えたわけではありません。
しかし、徐々に薄れゆく記憶の中で、僅か一年足らずの間でしたが、偶然にも一緒に過ごすことができたチビ助の記憶を残しておくことにしました。


